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ガイダンスが終わった大学1年生が知っておきたい「大学の授業」のメカニズム

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大学1年生のみなさん、眠い各種ガイダンスお疲れさまでした。いつも思うのですが、人を集めて説明しないといけないような履修システムは、そもそも設計が間違っていて、本来はパソコンorスマホ画面に沿って進んでいくだけで最適な授業を選択できるようにすべきです。大学は最先端のサイエンスやテクノロジーを扱うところですが、組織運営に関しては絶望的だと言わざるを得ません。いまだに授業でスマホの使用を禁止しているようなところも多々あります。(しかし、ガイダンスはお友達を作るための良い機会だとは思います)

 

さて、そんなリアル体験を重んじるガイダンスも終わり、そろそろ授業が始まりますね。中学に入る時も高校に入る時も「予習復習が大事だ」とオトナに言われてきたと思いますが、きっと大学のガイダンスでも同じようなことを言われたのではないでしょうか。オトナが言うことはだいたいいつも同じで、全く進歩がありません。もっと予習復習を頑張って欲しいと思った大学生も多いでしょう。

 

しかし実際のところ、大学の授業はこれまでの学校とはだいぶ事情が異なり、本当に予習復習をしないと、かなりの不利益を被ることになります。大事なポイントが3つありますので、ぜひ今のうちに知っておいていただければと思います。

 

1、大学の先生は、先生のド素人

 小・中・高・塾・予備校の先生と違い、大学の教員は「教える」ということに関してなんら専門的なトレーニングを受けておらず、さらに「教える」ことに対するモチベーションもかなり低いです。

 

なぜなら、大学の教員にとって最も重要で興味があるのは「研究」だからです。大学の教員は、普段は研究室というところにいて、自分が割り当てられた週に数回の授業の時だけ、ふらっと講義棟に行くみたいなイメージです。

 

しかし、これは別に悪いことではありません。やっぱり大学の教員の本分は研究であり、個人的にも、より多くの脳みそメモリ&CPUを研究に割り当てて欲しいと思っています。つまり、大学の教員はダメだと言っているわけではなく、そういう事情の中で動いているということを理解し、受け止めましょうということです。

 

 

 2、文科省は神様

大学が何を基準に授業設計しているかというと、文科省の決めたルールです。どれくらい単位が必要とか、何回授業やるとか、そういうのは文科省が決めております。小中高も文科省の作ったルールによって運営されていますが、大学は専門性を追求しなければならない一方で幅広い教養も大切だとされており、さらに最近はキャリアの授業もやりなさいみたいなことも言われています。

 

そのため大学は中途半端に与えられた自由()の中で、限られた授業の枠をどう分配するかを考えなければならず、大学内の会議はさながら冷戦中の様相を呈しています。例えば、就職課の職員はキャリアデザインみたいな授業を増やそうとしていて、理系の教員は、そんなことよりも電磁気学量子力学の演習をもっとたくさんやるべきだと思っているわけですね。

 

ここで大事なのは、大学の授業はそういういろいろな制約条件の中で、神様である文科省と学内関係者の機嫌を損ねないように最適化されているというオトナの事情を理解ことです。小中高や塾のように「この通りにこなしていくと学ぶべきものが一通り学べる」というカリキュラム設計には全くなっていないのです。大学3〜4年生になって研究をする際に知っておいた方がいいことが100あるとすると、そのうち8くらい、多くても20くらいが授業で垣間見れると思っておいてください。

 

 

3、教科書がない

シラバスを見ると教科書が指定されていますが、大学でいう「教科書」というのは、中学や高校の教科書とは全然違います。大学では教員が好きに教科書を選ぶことができ、自分が昔読んだお気に入りの本を教科書に指定する人、自分が執筆した本を教科書に指定する人、非常に偏った思想の色合いが強い本を教科書に指定する人など、様々です。

 

小中高の教科書は、かなり緻密に計算されていて、何も知らない人が少しずつ新しいことを学習するということに最適化された設計になっています。学校教育をディスるオトナは多いのですが、小中高の教科書は、実はかなり完成度が高いのです。一方で、大学の教科書は「たまたま誰かが書いて、たまたま誰かが選んだ本」です。読者の前提知識などほとんど考慮されていませんし、素人にわかりやすく教えてあげようというスタンスもほとんど感じ取れません。ちなみに教科書検定がないので、間違いもよくあります。大学の授業においては、教科書に頼り過ぎると痛い目に遭うのです。

 

 

まとめ:期待できるたった一つのこと

ここまでの内容を要約すると、以下の通りです。

 

大学の授業においては、

・先生に期待しない

・カリキュラムに期待しない

・教科書に期待しない

 

 

しかし、期待していいものが一つだけあって、それは学ぶ内容です(特に専門科目)。みなさんがこれまで小中高の授業で学んだことは超基礎編であり、場合によっては「お勉強のためのお勉強」でした。一方、大学では、最先端の研究に迫るとても面白い内容が盛りだくさんです。「こういう説とこういう説があるけど、まだハッキリしていない」とか、「こういう仮説があって、最近◯◯さんがこういう実験をしたら、こういうデータになったので、おそらく正しいと思われる」とか、そういう話もたくさん出てきます。めちゃ面白いです★

 

場合によっては相変わらず基礎学習っぽい内容もありますが、これまでやってきたことと比べるとかなり高度で、実践に近いものです。問題集を解くことではなく、そこにはどういう真理があるのかという内容を理解することにフォーカスすれば、これまでとは違ったモチベーションで勉強できるのです。

 

ただちょっと注意しないといけないのは、学問領域の分け方が、みなさんがイメージしているのとはちょっと違うということです。例えば、高校で扱う「化学」と大学で扱う「化学」では、だいぶやることが違います。どれくらい違うかというと、WindowsMacくらい違います。そのため、これまでの知識の延長線上で学ぼうとすると、かなりの高確率で躓くことになります。基本的に、すべてをゼロベースで新しいことを学ぶつもりで取り組んだ方が良いと思います。

 

…というのが、大学における「予習復習が大事」が意味することです。 

 

もちろんたくさん遊ぶのは大事ですが、何か「こういうことを学びたい、研究したい」というのがあって大学に入ったはず。

 

オポチュニティはすぐ近くでひらひらと舞っています。手の平の上には落ちてきませんが、ジャンピングキャッチすることなら可能です。

 

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