芳野真弥の確率Blog

僕たちが変えられるのは確率だけ(たぶん)

先輩就活生が考えていたこと、やっていたこと(1人目:慶應・理工・修士・男子)2/4

 

 

前回のお話はこちら。

 


 

志望業界の移り変わりと情報収集のやり方

芳野:コンサル系の就活が修士1年の12月くらいに終わって、その後はどんな感じで就活を続けていったんですか?
 
W氏: A.T.カーニーというコンサル会社のワークを受けていたときに感じたんですけど、僕は経営戦略よりもマーケティング戦略を考える方が楽しいなって思ったんです。コンサルは”企業のお医者さん”と例えられることが多いですが、僕は企業を相手にするだけじゃなくて、自分が生み出したモノが実際に生活者に届いて、そのリアクションが見れるときがワクワクするんだな、って思いました。よく考えたら、今までやってきたこととも、そういうユーザー目線で何かを届けるということだったんです。

芳野:なるほど。具体的にはどんな業界が合致してると思ったんですか?

W氏:マーケティング分野なら広告業界かなって思いました。コンサル業界を調べていたときに、博報堂電通がコンサルの子会社を3年前くらいに作ったということを知っていたのもあって、博報堂電通はまず受けようかなと思いました。そこから広告業界の業界研究や企業研究をしましたね。

芳野:広告系にも志望業界を広げていったんですね。

W氏:そうですね。あとは、今までWEBページをいろいろと作ってきた経験もあったので、IT・WEB系の企業、例えば、サイバーエージェントDeNA楽天リクルートなどにもエントリーしました。

芳野:新たに受ける業界の領域を広げていこうと思ったとき、どうやって情報収集したんですか?やっぱりリクナビとかマイナビ

W氏:「IT系 企業」みたいに入力してググりました。そこで知っている名前の企業のホームページから採用情報を調べました。僕はリクナビマイナビは使わない派でした。登録はしていましたけど。リクナビマイナビで使ったのは、テスト対策や適正診断くらいですね。そこからエントリーはしなかったです。

芳野:なるほど。ググって、直接企業の採用ページを見てたと。僕が今まで会ってきた上位大学の就活生も、そういう人は多かったですね。一応登録だけする、みたいな。他には何か情報源はありました?

W氏:OB訪問をしました。大学で所属していた学園祭関連のサークルに、就活支援用の組織があったんですよ。そこで志望企業を伝えると、例えば5コくらい上の先輩がOB訪問させてくれました。慶應はたくさん人がいるので、理系の修士から広告系やIT系・WEB系に行った先輩を探して会いに行きました。OB訪問は、会ってくれた先輩たちが自分にフィードバックをしてくれて良かったですね。電通で3人、博報堂も3人くらい先輩がいました。

芳野:OB訪問は、全部で何人くらい会いました?

W氏:(就活ノートを見ながら)11人ですね。でも、みんなもっと会っています。本当に行きたい企業なら、その会社だけで10人くらい会ったりとか。会ったOBにお願いして、さらに別の人を紹介してもらって会うこともあるみたいです。でも、僕は3人くらい会ったらだいたいどんな感じか分かったので、むやみに会う人数を増やそうとは思いませんでした。

芳野:同じ会社だと、言うことも似てくるんでしょうね(笑)。OB訪問って、平日の昼間に職場で会ってくれるんですか?

W氏:平日の昼間と夜ですね。基本的には平日でした。昼にごはんを一緒に食べながら話したり、夜に会議室で話したりもしました。

芳野:そこで、「うちに来いよ」みたいな感じで誘われてたことはありましたか?

W氏:ないですね(笑)。慶應卒の博報堂の人事の人を紹介してもらって、2時間半くらい話したときは、お互いに何となく惹かれ合ったような気がしたんですけど、それで就活が有利になったみたいなことは全然なかったです。まあ、惹かれ合ったというのは僕の思い込みかもしれませんが(笑)

芳野:いや、直感は大事ですよ。本当に(笑)。いずれにせよ、OB訪問というのは純粋に後輩のためにアドバイスくれるものなんですね。

W氏:そうですね。OB訪問はそういう印象でした。

 

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(就活が終わったら、すぐさま髪型を戻したW氏)

 

 

サークルや研究のこと

芳野:一旦ここで学生時代にやっていたことの話を聞かせていただきたいと思います。先ほど大学のサークルの話がありましたが、どんなことをしていたんですか?

W氏:まずは、大学入学当初から学園祭関連のサークルに入っていました。自分が作ったもので人が喜んだり、「面白かったよ」って言ってもらったりと、反応がその場で見えるのが嬉しくて、それをモチベーションに活動していました。この学園祭運営サークルが、先ほどお話したOB訪問の紹介をしてくれたサークルです。

芳野:そうだったんですね。

W氏:学園祭の活動は1年間単位なので、時間に余裕のある時期もありました。そこで何か面白いことしたいなと思い、ラジオ番組を作りました。YouTubeにUPしたりして、学園祭の認知度を上げようと頑張っていました。

芳野:そのラジオではパーソナリティーをやっていたのですか?

W氏:パーソナリティーもやっていましたね。メジャーデビュー直前のバンドをゲストに呼んで、インタビューなどをしていました。大学1年生の冬には、動画も作り始めました。それまではパソコンではネットサーフィンしかしたことがなかったのですが、動画編集をしていく中で、ネットサーフィン以外のパソコンの使い方や楽しさを知りました。

芳野:いろいろやってると、知識やスキルも広がっていっていいですよね。ところで、研究のことも教えて頂けますか?まだ在学中なので、今もやっていると思いますが。

W氏:研究は固体物理、物性物理です。具体的には超伝導という抵抗ゼロで電気を流す現象があって、それを発現する物質を探すという研究です。なので基礎的な物質探索ですね。化学系の知識も必要でした。

芳野:なぜその分野に行こうと思ったのですか?

W氏:常温に近い温度でも超伝導を発現する見つけられれば、海底ケーブルなどを使って、海外で発電した電気を日本に持ってこられるって知って、純粋に「夢があるな」と思いました。でも、実際はそんな簡単に見つからないんですよ(笑)。ただ、新しい物質を作って、物性を測定していく中で面白い現象が見られれば価値のある結果になるので、研究をしているうちに物性物理は学術的に面白いなと思うようになりました。

芳野:へぇ~。具体的にはどんな研究をやってるんですか?

W氏:僕がやっているのは重い電子系、Heavy fermionっていう分野なんですけど、そこではまだ理論が構築されていない現象が起こっているんです。重い電子系の中で超電導を示す物質があって、それは今までの重い電子系のBCS理論では説明ができないんです。そういうのが面白いなと思って。それで、新しい超電導を示す物質を作っていかないと理論構築ができないので、まずは物質探しをやってます。

芳野:そういう研究関係の仕事に就こうとは思わなかったのですか?

W氏:最初から視野に入れてなかったですね。物質自体がどういうものかという研究テーマは、学術的な価値があるのですが応用面が少ないんです。例えば、今使われているものだと、リニアモーターカー風力発電MRIくらいですね。同じ分野にいる先輩や同期を見ても、電気・ガス・JR・NTTなどのインフラ系へ就職する人が多いです。

芳野:思いっきり専門分野というよりは、研究をする中で培った理系の幅広い知識を活かした就職ということですね。

W氏:そうですね。僕も学部の時は物理情報工学科で制御や電子回路系をやっていたので、それは就活をしていて企業から評価してもらえましたね。一部、研究内容をそのまま活かせる分野、例えば電線を作っているフジクラという会社に就職した先輩や同期もいることにはいますけど。

芳野:僕も素粒子物理という企業では役に立たない分野の研究をしていたので、みんな付随的に得た回路やプログラミングの知識を活かせる仕事に就いてます。僕以外はね(笑)。ちなみに、ドクターに進んで研究者になろうとは思わなかったのですか?

W氏:コンサルの就活を始める前には少し考えていました。修士1年の夏に、スタンフォード大学の人と共同研究をするために、アメリカに行ったんです。そこで施設見学をさせてもらいました。国立の研究所が敷地内にあって、そこでは日本のSpring-8では予約も取れないような実験装置をばんばん使うことができるんです。これは最強だなって思いました(笑)。というのも、物質を作る研究って、作るだけでは意味がなくて、その物性・物理量を測らないといけないんです。物性・物理量を測ると面白いことがわかるのに、測れていない物質がうちの研究室にもたくさんあるんです。それを向こうに持って行って測れれば絶対に面白いことがわかるのに!と思ったんです。でも、外部に頼んでいるとファーストオーサーを取られてしまうので、自分自身が海外に行ける機会があればいいなと思っていました。先生も、共同研究した先輩からも「ドクター行きなよ」って勧められていたんですけど、就活をしてから考えようと思っていました。

芳野:就活してみたら、ドクターに行く気がなくなったんですか?

W氏:就活していくうちに思ったのは、研究者ってあまりチームで研究するという感じではなくて、一人でやらなきゃいけないじゃないですか。それは自分の性に合わないなと確信して、研究者を目指すのはやめました。

芳野:リクルートに就職するとなると、今後はサイエンスに携わる機会が減っていくと思いますが、それに対する寂しさはありますか?

W氏:あります。応用物理・固体物理の分野ってテクノロジーの基礎になるんですよね。パソコンの中身ってほとんど固体物理で説明ができるし、応用物理の進化があってこそ、ハードディスクやメモリーディスクも小さくなっていったんですよ。今後も新しいテクノロジー、デバイスに関わっていきたいなとは考えています。僕が携わるリクルートの部署はそういうことができるというのも大きな決め手になりました。

 


 

 

次回は、いよいよ、最終的に内々定を貰うことになるリクルートとの出会いが・・・。リクルートのどこに惹かれたのか、その全貌を赤裸々に語ってくれます。

 

 

 

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※今回のスタッフ

 髙﨑理子@riko_kuma)、芳野真弥(@m_t_t_b

 
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